2012年3月10日土曜日

現に目の前にある危機



3.11からもう一年になる。

事故当時からそうだが
東電や、その代弁者のような連中の
本来の優先順位を全く無視した
本末転倒が全く直らないどころか
ますますひどくなってきているように見える。
福島原発の事故収束宣言にしても
既存の原発の再稼働への姑息な根回しにしても
現に目の前にある危機を放置し
日本や世界の安心や安全を無視し続けている。
ましてや
私たちの社会がこれからどうあるべきか
というヴィジョンなどどうでも良いとばかりに
東電を始め
省庁も政府も経団連も
これだけの事故が
まるで存在しなかったかのように
過去に手にしていた権益を
必死になって再び
取り戻そうとしているように見える。
非道なのは
福島の事故現場に対する対応だ。
過酷な環境の中で多くの人が働いているが
このような事態を招いた張本人である
東電の幹部たちは
彼らに敬意を表して
最大限の手当をするどころか
責任も取らず
自ら弁当の一つも届けることすらなく
結局
私たちの安全を守る最前線にいる人たちに
非人間的な扱いを強い続けている。
しかも事故収束宣言の後は
既に収束したのだから
危険ではないという屁理屈をでっち上げて
危険手当までカットし
日常勤務なのだからと、弁当はおろか
水さえ自前でコンビニで買えという始末だ。
私たちに対しても
事故当初は
停電で脅して原発が必要と言い
原発がなくてもやっていけることが
誰の目にも明らかになってきた今
今度は値上げという脅しで
原発を正当化しようとする。
許せないのは
総括原価方式という悪法を笠に着て
電気料金につけ回すに好都合の
原子力関連の巨大な資産には手を付けずに
微々たる現場の費用を出し惜しみ
さらに深刻なのは
国民と世界の安全と安心のために
今すぐ現場でやるべきことを
放置し続けていることだ。
少なくともこんな悪法は一刻も早く
文字通り改正すべきだ。
そうしないと電力会社は
原発のような資産増大装置ばかりに
執着し続けることになる。
たとえばの話
これだけの事故を既に起こしたのだからと
また現に電力を生産できないのだからと
さっさと福島原発を没収して
政府の管理下において
徹底的に対策を講じるなり
すべての原発関連施設を
電力会社から切り離す算段を講じて
国が責任を持ってそれらを全て
廃炉にするという方法も考えられるが
そうなると
電力会社の資産は一気に減り
その分、電気料金も利益も一気に減るために
電力会社は必死に抵抗する。
抵抗を無意味にするには
電力三法や総括原価方式などという
悪法を無くすなり
これは被災地全体についても言えることだが
電力会社と一部の利益権者のためではない
国民と未来のための
あたらな特例法を早急に作って対処すべきだ。
それが国会や政府の本来の役割なのだが
過去やにしがみついたり
責任を背負いたくないばかりに
根本的なところを
避けて通っているばかりだ。
それに
今なお福島原発の四号機では
千何百本もの使用済み燃料棒を入れた
巨大なプールが
いつ崩れ落ちるかわからない
ボロボロになった壊れた建屋の中空に
乗っかっている。
既に壊れた構造体の上の方に
核燃料の入った
巨大な重量物があるという現実は
事故収束宣言が出された今も
私たちの日常が
さらに巨大な放射能被害の危険に
さらされていることを意味している。
燃料棒が入ったプールが
崩れ落ちればもちろんのこと
そうでなくても
プールにヒビが入って
水が漏れ出してしまえば
放射能を遮るものも
核反応を止めるものも何もなくなる。
こんな重大な危機を
なぜ一年も放置してきたのか。
当初からアメリカが
最も危険と指摘してきたそのことを
なぜ東電も政府も黙っていたのか
たった今からなぜそれに
日本の全知全能を投入して
立ち向かわないのか。
実に悲しいことだが
作業員の弁当さえけちる東電に
そんなことが出来るはずがない。
また日本の、建設界を含めた技術者に
それに立ち向かう
知恵や技術がないわけがない。
汚染水の処理なども
現在の日本の技術力を考えれば
いくらでも方法はあったはずだし
現にあるが
すべては常に後手後手か
それともとってつけたような処置しか
東電はやってこなかったし
政府も重大なことに一刻も早く
対処できるような算段をしてこなかった。
明日で一年になる。


被災者である東北の人たちが
必死で前を向こうとしているのに
東北の市民の懸命さ、ひた向きさ
素晴らしさに比して
東電や政府や省庁や経団連を含めた
権力を采配する立場にある
組織の非道さ、お粗末さは目に余る。
本来明日を創り出す立場にある連中の多くが
このような現実を前にしてなお
過去の方ばかり向いている。
過去の手法にしがみついている。
これからでも遅くない
というより今すぐ全力を挙げて
FUKUSHIMAで
日本が起こしてしまった人災の後始末と
さらなる人災を未然に防ぐことに
日本が総力をあげなければ
またそうすることで
国の仕組そのものを変えなければ
私たちの未来はない。
原発の再稼働などという
過去にしがみつく金の亡者の
愚鈍な不見識など論外だが
それ以前に
もう一度
少し大きめの地震が起きたら
それでなくとも
なにかの拍子に燃料プールが崩れ落ちたら
それこそ
取り返しのつかないことになる。